
東方水麗譚
| 太陽が眩しい。光は燦々と差し肌を焦がす。そこから汗がじわりと滲み出てくる。 「あー、暑いぜ暑いぜ、暑くて死ぬぜ」 「だったら泳げばいいのに、折角水着なんだから」 ここは幻想郷唯一の海。幻想郷が海に面しているかは知らないけど、海があるって言ったら海があるの。なければ私が造る。とにかく、延々と広がる白い砂浜の上で、霊夢と魔理沙がこれまた延々と広がる海を仰いでいた。 「いや、そこが作者の狙いっぽくて嫌だぜ。だいたい暑中見舞い小説を書くってのはわかるが、何で作者のオリキャラにしなかったんだ?あいつ何だかんだで作品も書いて公開してるだろうに」 「そのオリキャラに問題ありなのよ。9歳の女の子剥いでも喜ぶのは作者と一部の人間だけよ」 「なるほどな。それで私達が水着か。納得したぜ、作者の安直さに」 霊夢は淡い黄色のビキニ、腰にはパレオ、全体的に控え目な印象を与えていて、対照的に魔理沙は黒と白の混じったワンピース、大人っぽさと子供っぽさが入り混じる、人目を引く風貌だ。 「ま、悪くないんじゃない?少なくとも私んとこの神社で一日中ぐてーっとされてるよりはマシね」 「それもそうだな、お前んとこで、夏だってのに熱いお茶出されるよりは百万倍マシだな。……ん……」 魔理沙が吹っ切れたように大きく背伸びをする。再び開かれた彼女の視界の先には、地平線までいっぱいの青い海が広がっている。 「このまま水着でいてもただの見世物だな。その方がよっぽど嫌だぜ。いっちょ泳いでくるか」 「始めっからそうしろって言ってるのよ。他のみんなも結構泳ぎ始めてるわよ。ほら、また御一行様の到着……ってうそ!?」 「おぉ!?」 まさかあいつらが来るとは。二人の顔がそう言っていた。 燦々と輝く太陽の下に現われたのは、何と紅魔館の吸血鬼、レミリア=スカーレット。 「咲夜ぁ〜」 「はいはい何でしょうお嬢様」 「れみりゃも泳ぎたーい」 「……ぶっ(鼻血)いえ、しかしお嬢様、もしこの日傘から一歩でも外に出られますと、お嬢様は灰になってしまいます。増してや海で……水着になられるなどと………………ぶっ(再び鼻血)」 「えー!」 「か、勘弁してくださいお嬢様」 止まらぬ鼻血を必死に拭う紅魔館の主の犬、咲夜。その隣にいつのまにやらスクール水着に着替えた日陰の少女、パチュリー=ノーレッジが現われる。サングラスに麦わら帽子、絶対防御であった。 「まぁまぁ咲夜、そんな時のために私は用意していたわ。レミィのために、特製の水着を」 「え!?パチュリー様何ですって!?」 「咲夜、顔緩みすぎよ。さぁ、見なさい!これが私の英知を統べて開発した、UVカット水着よ!!」 「ゆ、UVカット!!……な、なんですかそれ……!?」 咲夜の疑問符を無視して、パチュリーはその場でレミリア(れみりゃ)の服を脱がしていく。……あらら、これは永久保存して私の幻想郷メモリーズに追加ね。 咲夜は鼻血をだらだらと垂らしがら必死に目を背け続けている。 「はい、これでよし。さぁレミィ、傘から出てみて」 「はーい」 「お、お嬢様……ぶっ!? (三度鼻血)」 レミリアの幼い肢体が太陽光のもとに晒される。平らな胸に貼られた「れみりあ」の文字が、神々しく輝く。 「わぁ!すごい!太陽の下でも大丈夫!ありがとうパチェ」 「いいのよ、レミィ」 「じゃあ早速泳いでくるね。咲夜も一緒に泳ごう」 「わ、私もですか」 「……嫌?」 上目遣い。 「……い、一緒に泳がせていただきます、是非に」 「わーい!咲夜と水遊びぃ〜」 そして海の中へと入っていく。咲夜はダラダラと鼻血を垂らしながら、レミリアはただ無邪気に。 それを無表情で見送るパチュリーの瞳が、サングラスの奥できらりと光った。 「……あれ?咲夜?何だか体がすーすーする」 「え?お嬢様どうされました――!?」 「あれれ?水着溶けてる。わー、咲夜、見て見て裸んぼ!」 「――(ブシュゥゥゥゥゥ!!死)」 「……要はあれね、光、日に、火に強ければ水には弱い。全てのものには属性がある、それが弱点になるってことね」 パチュリーが顔からサングラスをとる。そしてふっと微笑んだ後、自らはビーチパラソルの日陰に帰っていった。 「おー……海が真っ赤に染まっていくぜ……」 「ジョ○ズでも出たのかしら?これじゃあおちおち海水浴もしてられないわね」 「その前に誰も血で染まった海でなんか気持ち悪くて泳げないぜ。あー、熱いぜ熱いぜ、熱くて死ぬぜ」 その時、彼女らの頭上が突如陰った。 「お?太陽が雲にでも隠れたか――」 「わーい!うっみだぁぁぁぁ!!」 「うぉっ!」 ばっしゃーん!と、ド派手な着水音がした。ミッシングパープルパワー萃香が、血塗りの海にダイブしていた。それと同時に、赤き大波が全てを覆う。 白い砂浜はあっという間に、火星の赤く荒涼とした大地の如きへと変わった。 『海の家、香霖堂』 霊夢達のいる砂浜からは少し離れたそこにて。 「……お待たせしました、焼きそばです」 「うむ」 「……」 「……」 「……あの……」 「む?どうした?霖之助」 「いえ、あの、ここに座ってもよろしいでしょうか」 「うむ、かまわんが」 「ありがとうございます、妖忌さん。失礼します……」 「……」 「……」 燦々と輝く太陽の下、男2人が無言で相対している。 方や魂魄妖忌さん。ピチピチの競泳用の水着をその身に纏い、洗練された肉体の輪郭を惜しげもなく露出させている。彼は無言で、蓄えられた厳かな白髭にソースが一滴たりともつかぬよう、精巧な箸捌きで焼きそばを食していた。 方や森近霖之助さん。下半身には柄の派手なトランクス、上半身には「海人」と書かれたTシャツ。決して悪くない顔立ちにかけられた銀縁の眼鏡、そこから覗く瞳には憂いが浮かんでいる。 静謐に満ちていた。まるで霊夢達のいる賑やかな砂浜から、そこだけ隔離されているようだった。 「……妖忌さん、何で折角の海なのに僕達の周りには女の子が一人もいないんでしょうか」 「……ふっ、そんなことを気にしていたのか。まだまだ尻が青いな霖之助」 「でもですよ!折角出れたのに……目の前にいるのがむさい男だなんて寂しすぎる!」 「……ほぉ、言ってくれるな、霖之助。出られただけでもマシと思うのが身のためだぞ。こういう作品では男キャラはイジられるというのが相場だからな。あれを見てみるがよい」 そう言って、妖忌は『海の家、香霖堂』からは少し離れたその場所を指す。バレボールネットが張ってある。彼らがいる場所とは打って変わって賑やかなその場所では…… 「死にくされぇぇぇ!輝夜ぁぁぁぁ!!フェニックスシュート!!」 「おじいさん!そっちに行ったわ!」 「む、無理じゃぁぁぁぁぁ!!(死)」 「ナイストスよおじいさん。さすがは蓬莱の薬を焼いただけのことはあるわね。始めから命など惜しくはないと。 いくわよ!妹紅!おじいさんが遺したものを無駄にはしないわ!蓬莱ブランチボール!!(蓬莱の球の枝)」 「お父様!!」 「さぁ!姫!私の胸に飛び込んでくるんだガハァッ!!(死)」 「お父様ぁぁぁぁぁぁ!!」 「……」 「とまぁ、あぁいう目に遭うわけだ。わかったな、霖之助」 「というより何で彼らがいるんでしょうか。設定的にここに存在していてはいけないはずでは……」 「あぁ……だから尻が青いというのだ。全部八雲紫の所為に決まっておろう。こんな無茶苦茶なことをしでかすのは」 ……む……? 「だいたい昔からあ奴はそうなのだ。他人に迷惑をかけてそれを楽しみよって。これだから歳を無駄に喰っただけの女は好かんというのだ」 ……ス・キ・マ? 「だいたい幽々子といい紫といい――」 「……あれ?妖忌さん!?ちょ、ちょっと!瞬きしているうちに消えた!?そんな馬鹿な――」 「お父様の仇ぃぃぃぃぃ!!喰らえやぁぁぁぁぁ!!輝夜ぁぁぁぁぁ!!」 「大丈夫よ、ラインアウト」 「――へっ?ガハァァァァッ!!(死)」 男達の集っていたテーブルの下に未だ燃え盛るビーチボールがコロンと一つ転がる。『海の家、香霖堂』では、霖之助さんの死体が一つ、静寂を保っているだけだった。 一方、『海の家、香霖堂』とは正反対に位置する、『海の家、永遠亭』では…… 「どうして……どうして妹紅は私の気持ちに気付いてくれないんだ……」 「わかるわ、慧音、その気持ち。うちの姫もそうだから」 「うぅ……そうか……永琳……お前もか……あぁぁぁ!今日は飲むぞぉぉぉ!付き合え!永琳!」 「はいはい。慧音、私はいつでもあなたの味方だからね」 「……永琳……」 そう言っておいおいと泣く慧音。その陰で、永琳がニヤリと笑って呟いた。 「まずは慧音懐柔成功」 永琳の『妹紅抹殺計画』もとい『姫は私だけのモノよ計画』は着々と進行していた。 「……………… ………… ……」 「……美鈴さーん!」 「……」 幻想郷に存在するもう一つの避暑地、中央に紅魔館のそびえる幻想郷一の広さを誇る湖。その畔で、紅美鈴は表情を明らかな憂いに染めて座り込んでいた。 「美鈴さん、咲夜さんからの置手紙です。『最萌といい萃夢想といい、最近あなたは調子に乗り過ぎです。反省も兼ねて、妹様のお世話をしていなさい。私達はお嬢様と一緒に海へ行ってくるから』だそうです。あ、何か最後の方鼻血ついてますね」 「うぅ……どうせ私はこういうのがお似合いですよ……うぅ……」 「気を落とさないで下さい、美鈴さん。名前があるだけマシだと思います。私なんか……」 「……ありがとう、そう言ってくれるとうれしいわ。名も無き小悪魔」 「最後のは言ったらいけないんじゃないかと思います」 「気にしないで。うん、何か元気出てきたわ。名も無き小悪魔、2人で妹様のお世話を頑張りましょう!」 「だから名も無き名も無き言わないで下さい――」 ドーンと派手な爆発音が彼女らの頭上から響いた。見れば、紅魔館の最上階の部屋から煙が立ち昇っている。そこからすごい勢いで何かが……蝙蝠みたいな何かが飛び出していくのを彼女らは見た。 「今の……妹様ですよね……」 「……」 「わ……もう見えなくなっちゃった……今から追いかけても間に合いませんね……」 「……」 「……美鈴さん、咲夜さんに殺されますね……」 「……」 「……」 「……うわぁぁぁぁぁぁん!!」 静かな湖畔に美鈴の鳴き声だけが空しく響く。 「わーい!仮面○イダーだぁぁぁ!」 「て、てゐちゃん!!い、いやぁ!!返してぇぇぇぇ!!」 「来たな!怪人うどんげいん!○イダーキィィィック!!」 「ぐはぁっ!」 「おぉ?だいぶ賑やかになってきたな」 舞台は戻って青い海白い砂浜。バスタオルを一枚巻いただけの鈴仙が、彼女の白いビキニの水着を頭に被り眼鏡のようにかけて、仮面○イダーごっこをするてゐちゃんを追っていた。 というように、ここも様々な人妖が集まってきて、喧騒も一層激しいものになっていた。 「にしても人妖多すぎじゃないの?ってあぁ!萃香!『妖鬼―疎―』は使っちゃ駄目って言ってるでしょ!」 「あー、まぁ、私が呼んだんだけどな」 「あんたがこいつら呼んだの!?作者の狙いが嫌だとかどうとか言ってたじゃない!」 「あー。気にすんな。道連れは多い方が良いってな。しかしまぁ、確かにちょっと呼びすぎたかも知れないな。これでも加減したつもりだったんだが」 「どこがよ」 「おバカな面々は他んところに預けてある。チルノを筆頭とするおバカな面々はな」 「にしてもこの数はないでしょう、この数は」 「それだけ東方キャラも増えたってことだな。何つったっておバカな面々を除いては全員呼んでるからな」 「全員……ねぇ……」 霊夢は虚空を見やる。真夏の太陽が眩しい。熱い光が砂浜を焼き、軽い蜃気楼を起こしている。その揺らぐ世界の向こう側で。 「あぐ……えぐ……」 アリスが一人、砂のお城を作っていた。 「あぐ……私はおバカな面々?それとも単に忘れられただけ?それとも魔理沙……私を呼ばなかったのは確信犯……あぐ……えぐ……いいもん……一人でも寂しくないもん……」 彼女の周りに浮く人形達も、あまりに彼女が不憫すぎて声もかけられないでいる。立派な砂のお城だけがただ、着々と出来上がっていく。 ふっと、突然に影が差した。人形達は何だろうと後ろを振り向いて、その瞬間逃げ出した。 「あぐ……えぐ………………うん?」 アリスも人形達が急いで逃げ去っていくのに気付いて、少し遅れて後ろを振り向く。同時、サーッと血の気が引いた。 「いいな、みんな泳げて。……私も泳ぎたい……お姉さまと一緒に泳ぎたい……。………………他人の幸せを見せつけられるくらいなら、いっそ壊しちゃった方がすっきりする……」 「……ひ……ひぃぃぃぃ……!」 彼女の背後には、破壊の化身、フランドール=スカーレットがいた。彼女の周りに赤い力が突如渦巻く。完成しかけていた砂のお城が一瞬で崩れる。 「咲夜ぁ!こっちこっち!私をつかまえてみてぇ!」 「あははぁ〜、お嬢様ぁ〜、待ってくださぁ〜い(咲夜自失中)」 「こっちこっち〜咲夜……あれ?フラン?」 「お嬢様ぁん……へ?妹様!?」 「お?あれはフランドールじゃないか?」 「あれ?アリスもいるわよ」 「お姉様……咲夜……みんな……みんな壊れちゃえぇぇぇぇ!!」 「「えっ?」」 爆発音が響いた。海が、砂浜が、爆発した。 白い煙が消えた後、綺麗に整備されていたはずだった砂浜は、荒れ果てた大地に変貌していた。 先程のような爆発音でさえ侵せぬ静寂なる空間、『海の家、香霖堂』、 「……」 「……」 は、先程は違った静寂に包まれていた。それは言うならば、重苦しい静寂だった。 その原因は―― 「し、師匠!何か言ったらどうなんですか!突然消えたかと思ったら……どうしてこんなところにいるんですか!」 「よ、妖夢……それは……」 「言い訳は無用です!悪いことをしたら黙って人の話を聞いていなさい!」 「さ、さっきと言っていることが違うぞ、妖夢」 「うるさいっ!」 「ひ……ひぃ……」 そこは弾劾裁判所と化していた。妖夢判事、妖忌さん被告人。裁判長の幽々子はその様子をあははぁと楽しそうに眺めている。 そして傍聴人は霖之助―― 「さ、さぁ……お茶だよ……」 「どうも、そこに置いておいて下さい」 「わ、わかった、じゃ、じゃぁ僕はこれ失礼――」 「ま、待ってくれ、霖之助!」 去ろうとする霖之助さんの腕をとっさに掴む妖忌さん。 「ちょ、ちょっと何するんですか」 「頼む、ここにいてくれ。私を一人にしないでくれ」 「え、えぇぇ!」 「うるさいっ!2人!黙って話を聞きなさい」 「……はい……」 「何で僕まで……」 妖忌さんと霖之助さん、2人並んで妖夢判事の一方的な弾劾を受ける。 「夢を追い去っていく男〜残った女は何を思う〜♪」 プリズムリバー3姉妹、もといレイラも加わって4姉妹の奏でる恋の歌をBGMに。 「だいだい師匠は勝手すぎるんです!幽々子様も私も放っておいて消えてしまうなんて!幽々子様への恩義と私の剣術の指南はどうするんですか!あぁ!もう!楼観剣で顔面に峰打ちかましてやりたい!」 「……た……助けてくれ……霖之助……」 「……僕に言わないで下さい……」 「あぁ!もう我慢できない!」 「「ひ、ひぃぃぃぃぃ!!」」 二人の絶叫が海の家、香霖堂』にこだまする。 「あははは!チルノ!くらえっ!」 「うわっ!やったなぁ!」 「……」 再び紅魔館。紅魔館を取り囲む広大な湖にて。 湖畔は喧騒に満ち溢れていた。 「……」 「えぇい!」 「うわっ!ちょ、ちょっと何で私にまで水かけるのよ!」 「わー!中国が怒ったぁ!みんな逃げろ〜!」 わー、きゃーと逃げていく、魔理沙曰くチルノ筆頭のおバカな面々。美鈴も追いかけようとはしたものの、馬鹿らしくなって、というか悲しくなってやめた模様だ。水着も着ていないので、そのまま水に入ると服が濡れるという理由もあったかも知れない。 「……」 再び美鈴はその場に座り込む。憂いに満ちた表情で。 「……はぁ……何で私がこいつらのお守りまでしなくちゃいけないのよ……」 「わかります、不幸になる人はいっつも決まっているんですよね。理不尽です。あ、そうです、ついさっき咲夜さんから伝言が届きましたよ。『帰ったら殺す』だそうです。何か咲夜さん血まみれでした。妹様にでもやられたんでしょうか」 「……」 「ちなみに私に伝言を残せるのは、咲夜さんが時を止めて私のところまで戻って来ているからです。わざわざ私に伝えずとも、美鈴さんのところに来て直接制裁を加えればいいのに」 「……恐がらせたいから……」 「え?」 「恐怖はじわりじわりと来るほうが恐いからよ……」 「……」 「……」 「……美鈴さん?」 「……あぁ!もう!あの狡猾女っ!ちょっとお嬢様に好かれてるくらいでっ!悔しい悔しい悔しい悔しいよぉ!」 「み、美鈴さん、狡猾女はないんじゃ――」 「いいのよっ!そのくらい!あぁ!もう!調子づいちゃってあの尼あの尼あの尼――」 ……あれ?今時が止まったわね。二人は気付いていないようだけど。 「――あの尼……ひっ!」 再び時が動き出した時、美鈴の足元には、一本の鋭利なナイフが突き刺さっていた。 「……あ……咲夜さん今来ましたね……」 「……ぁ……ぁ……」 「美鈴さんの言葉、聞いてましたね……」 「……ぃ……ぃ……」 「……もう、死刑決定ですね……」 「……ぃ……ぃ……いやぁぁぁぁぁぁぁぁ!!」 美鈴の絶叫が、おバカな面々達の生み出す喧騒の中に空しく消えていく。 三度戻って海。喧騒はピークに達していた。 ……そろそろ私の出番かな。 「お、ようやくご登場かな」 「え、ご登場って?」 「まだ来てないのがいるじゃないか」 「え?えぇ!?私はてっきりおバカな面々の中に入っているもんだと――」 「こらっ、霊夢、勝手に私達をおバカにしないで」 スーっと、砂浜の真上の何も無い空間に亀裂が入る。まるで垂れ幕をナイフでスーっと裂いていくかのように。そこから、3人の少女、少女なの、誰が何と言おうと、が現れる。 そう、私達、八雲一家よ。 「あらあら、皆さん、揃いもそろって可愛い水着姿で。海を満喫しているようね」 「おー、紫、遅かったじゃないか」 「というか何なのよ、その現れて早々のオヤジ発言は」 「あらあら、霊夢こそちゃんとわかっているのかしら?あなた達が何で水着姿でいるのか」 「作者の陰謀でしょ?」 「そうよ、よくわかっているじゃない。だったらわからないかしら?あなた達には大切な何かが欠けているわ」 「な、何なのよ、それ」 「サービス精神よ」 「さ、サービス精神?」 「そう、サービス精神。少しは読者のために一肌脱いであげようとは思わないのかしら」 「ど、どういう意味よ」 「文字通りよ。……えぇと……そうねぇ……うん、今から30秒後にあなた達の水着は全て吹き飛んで塵と化すわ」 「「え……えぇぇぇぇぇ!!」」 私の有り難いお言葉に、あちこちで不平の声が上がる。 「ちょ、ちょっと紫!それどういうことよ!」 「あ、あなた……そんな不埒な……」 「わーい!咲夜も裸んぼ!」 「……ぶっ(鼻血)」 「あらあら、何を言っているんだか。読者の皆様にサービスするのは当たり前でしょ。ほら、藍を見てみなさい藍を」 「OH!YAH!スッパ天狐!スッパ天狐!」 「きゃー!藍さまWILD!」 「これはあいつの趣味でしょうが!」 「ほらほら、そんなこと言っている間に、もうちょっとであなた達みんな全裸よ」 「く、くそ!みんな!紫を止めるんだ!」 「うふふ、もう遅いわ。さぁ、皆その痴態を晒け出しなさぁい!」 「く、くそ!」 「「きゃ……きゃぁぁぁぁぁぁぁ!!」」 「……?」 「……?」 「……あれ?おかしいわね……何も起きない……」 「……」 「……」 「うぉ!?」 「ぬあに!?」 「あららぁ〜?」 「きゃ……ちょ、ちょっと……師匠……霖之助さん……服……」 あらら、私どうやら間違えたみたい。 ビリっと派手な音がして、霖之助さんと妖忌さん、2人の纏っているものが全て弾け散った。 「……な……何が起こった……っておい……霖之助……!?」 「う……うぉぉぉぉぉぉ!!」 「いかん!こーりん漢モードが発動した!って霖之助!どこへ行く!」 「うぉぉぉぉぉぉ!!」 あっという間に全裸で砂浜を疾走して消えていく霖之助さん。 「り、霖之助……ってえっ……?」 「……し……師匠……」 「あららぁ、妖忌、老いてもさすが、素晴らしい肉体ね」 「え……いや……幽々子……妖夢……違うぞ……これは誰かの陰謀――」 「この……変態痴漢ぁぁぁぁぁん!!」 「よ、妖夢誤解だぐはぁぁぁぁ!!(死)」 楼観剣で顔面を思いっきり殴られる妖忌さん。彼の長かった半人生もこれで終わりを告げるかも知れない。 あら?そういえば霖之助さんは…… 「……」 「……」 「……折角だから水着を着てみました」 「今更ですけどね」 「……うぅ!私決めたの!逆行に立ち向かっていくって!私も泳ぐんだから!さぁ!行くわよ!名も無き小悪魔――」 「……あれ?何かがこっちに向かってすごいスピードで走って来ます」 「……へ……?」 「……人の形してますね……」 「……も、もしかして咲夜さん……?」 「違います……咲夜さんはあんな下品な走り方をしない……!?」 「ちょ、ちょっと小悪魔どこ行くの!?」 「す、すいません私耐えられません〜!!」 「ちょ、ちょっと何なの一体何が来るの…… …… ………… ………………え……う……うそ……」 「メーリィィィィィン!!さぁ!僕の胸の中に飛び込んで来るんだ!!来ないなら……僕の方から行っちゃうよ!!えぇぇぇぇぇい!!」 「う……うそ……結局こんなオチ……い……いやぁぁぁぁぁぁぁ!!」 ……と、いうことで、暑中見舞い申し上げるわね。by紫 |