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 食後、私は自室に戻って再度着替えた。今度はよそゆきのものでも、家の中で着るものでもない。戦闘服に、だ。
黒を基調としたゴスロリ風であることには変わりないけど、体を覆う部分が圧倒的に少ない服。本当に、胸と腰、そのくらい。別に露出が好きってわけではなくて、力を放つとき、服は邪魔なものでしかないから。
「英祐、私行ってくるわ」
着替えを終えて自室を出て、私はキッチンで食事の後片付けをしている英祐の背中に話しかける。彼は皿を洗うのを止めて、振り向いて私の顔を見て、それから言った。
「……そうですね、あれから3日、確かに、もうお辛いですよね」
「そうねぇ、体の節々痛くなってきちゃった。そろそろ限界みたい。ぱぁーっと派手にやってくるわ」
「……はい、お気をつけて」
 英祐の声に私は行ってきま〜すと手を振って答え、リビングを後にする。
 ベランダに出る。マンションの最上階、そこから見る眺めは結構いい。他にもマンションはいっぱい立っているけども、どれもここよりは低いから、結構遠くまで見渡せる。まぁ、私は透視できるから関係ないって言ったらないんだけど。
 ……私は、そこから、飛翔する。
 背中から突如生え出た、漆黒の翼をはばたかせて。
 高く、高く、飛んでいく。
 高度をどんどん上げていく。
 郊外に住んでいて嬉しいのは、少し上がれば人工の光が弱くなって、すぐに夜空が満点の星空になること。昔から星空の下で力を放っていたから、こっちの方が慣れ親しんでいて、それでいてテンションが上がっていいのよね。
 高度3000メートル。雲よりも上に来た。
 ここまでくると下界の光なんてまったく届かなくなる。星がどれ一つとて欠けることなく、全てが私を頭上から見てくれるいる。
 この無数の星たちが今日のショーの観客だ。
「……きゃはっ……きゃははっ……きゃははは……――
 きゃははははははははははははは!!」
 腕に力を込める。私の腕が、黒く鈍(にぶ)く輝きだす。
 突如(とつじょ)目下の雲が黒くなって、そして雷雲と化す。
 カァッと高密度の光と、轟く雷鳴とを共に、雷が下、ではなく上に向かって、私に向かって堕ちる。
 私はそれを腕で受け止め、私の腕がバチバチィッと帯電して、そして――
「きゃははははははははは!!」
 私はそれごと腕を振るう。
 今度は私の腕から雷鳴と共に雷が堕ちる。更にそこに力を込め形状を調節、雷を、雷の剣と成す。
「きゃはははははははは!!」
 それを持って更に高く飛翔。雲までもが遙か下方に見える。
 私はそれに向かって雷の剣を掲げそして――
「きゃはははははははは!!」
 投げ放つ。
 またも轟く雷鳴と共に真下の雲に堕ちたそれは、巨大な爆発を伴って、雲に電流を流し込む。目下の雲全てが、一瞬で雷雲と化す。
 そしてそれらが、一斉に爆発する。大量の雷鳴を伴って。
「きゃははははははははははは!!」
 私の、万能なる力によって。
 私は、それを見て、笑い叫ぶ。
 ……でも、やっぱり、そこまで気持ちよくはならない。だってこれは破壊ではなく、単に力の放出にしか過ぎないから。やらないよりかはましだけど、やっぱり何かを破壊できた方がいい。己の内にある破壊衝動がうずくから。
「きゃはははははははははは!!」
 それでも、こうして力を放つことができる時間は私にとって至福の時であり、私は十分にそれを満喫していた。
 ――その間、実は私には聞こえていた。聞こえていて、敢えて聞こえていないことにしてたけど。
遙か下方、雲よりもずっと下、私の住むマンションの、私と同じく最上階の部屋のベランダから、隣の部屋の、彼女――おばちゃんが、
「……きっと……人類滅亡の際に最初に殺されるのは私なんだわ……」
そう呟いていたのを。


                
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